| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(口頭発表) A01-12  (Oral presentation)

霞ヶ浦流域で生じる生態系サービス間のトレードオフとそれを緩和する保全策の検討

*松﨑慎一郎(国環研・生物生態系C), 高津文人(国環研・地域C), 今藤夏子(国環研・生物生態系C), 渡邊未来(国環研・地域C), 角谷拓(国環研・生物生態系C), 大澤剛士(農研機構・農環変動セ), 山口晴代(国環研・生物生態系C), 安藤温子(国環研・生物生態系C), 小松一弘(国環研・地域C), 霜鳥孝一(国環研・琵琶湖分室), 中川惠(国環研・生物生態系C), 中嶋信美(国環研・生物生態系C), 吉岡明良(国環研・福島支部), 佐々井崇博(東北大学院・理), 三枝信子(国環研・地球C), 松下文経(筑波大学院・生命環境), 高村典子(国環研・琵琶湖分室)

われわれは、どこかの流域で暮らし、水、農作物、気候調整、洪水調整やリクリエーションの場など様々な生態系サービスを享受している。一方、生態系サービス間でトレードオフも生じうる。多様な生態系サービスを持続的に利用するためには、生態系サービス間の関係を分析する必要がある。
 本研究では、霞ヶ浦(西浦)の全流域を50小流域に分け、10の生態系サービスを評価した。因子分析の結果、3因子が抽出された。第1因子では、気候調整、洪水調整、炭素蓄積、純一次生産、ハビタット多様性のシナジーが抽出された。第2因子では、農業生産と水質のトレードオフが抽出された。第3因子では、水田が抽出され、洪水調整、神社数との間に弱いシナジー効果が検出された。
 次に、農業生産と水質、両サービスがともに高くなるようなWin-Win流域の特徴を調べた。畑面積と窒素負荷量の間で回帰を行い、その直交残差を各流域のWin-Win度合いとして定義した。Win-Win度合いが最も高かった流域は、ため池が点在し開放水域面積率が最も高い流域であったことから、ため池のような湿地の保全が、トレードオフの緩和につながる可能性が示唆された。


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