| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(口頭発表) B01-04  (Oral presentation)

外来種ウチダザリガニに対する継続的駆除の効果

*一條信明(釧路自然保護協会)

 ウチダザリガニは、1926~30年に北アメリカコロンビア川水系に生息するシグナルザリガニが日本に運ばれ、北海道摩周湖と滋賀県淡海池に放流されたものの子孫である。現在は北海道、福島県、千葉県、栃木県、長野県、滋賀県でその生息が確認され、日本生態学会によって日本の侵略的外来種ワースト100に指定されている。その駆除は日本の様々な地域で行われているが、それが成功した事例は報告されていない。
 演者は、高校理科部の活動として、生徒と共にその駆除に釧路市の小規模な池で2008 年から 2012 年にかけて取り組んだ。標識採捕法と除去法によって池に生息する個体数を求め駆除効果を検討したところ、除去の最初の年に成体数の減少が見られたが、その後は駆除の継続にもかかわらず個体群は絶滅しなかった。その原因として以下の 2 点、(1)学校行事等による駆除活動の中断が多々あり駆除圧力が弱かったこと(2)ワナのカニカゴの幼体の捕獲効率が低かったことが考えられた。
 その後演者はワナにアナゴカゴを用い、2013、2014、2015年に5月中旬または下旬から10月まで毎週駆除を行った。その結果捕獲個体数は2013年の1205から2014年は162、2015年は19へと激減した。2016年と2017年は7月と8月に毎週駆除を行ったが、捕獲個体数は2016年に9、2017年は5となり、ほとんど捕獲されなくなった。アナゴカゴはカニカゴより捕獲効率が高く、特に幼体でそれは顕著だった。この捕獲効率の高いワナを用いて毎週継続的に駆除を行い駆除圧力を高めたことが、この池の個体群を急激に衰退させることができた原因と考えられた。


日本生態学会