| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(口頭発表) B02-02  (Oral presentation)

極東ロシアのゼイスキー自然保護区における林床植生の空間変異

*和田直也(富山大学), Borisova, Irina(BGA FEB RAS), 清野達之(筑波大学), 杉浦幸之助(富山大学), 露木聡(東京大学), Khatancharoen, Chulabush(東京大学), Bryanin, Semyon V.(IGNM FEB RAS), Lisovsky, Victor V.(ZNR)

ゼイスキー自然保護区は,ロシア連邦アムール州中北部のトゥクリングラ山脈東端に位置している。1963年に設置された当保護区内では,森林の伐採は禁止されているため,人為的影響の少ない森林が良好に残されている。一方,木材供給地の一つとなっているアムール州では,違法伐採や森林火災が森林資源を減少・劣化させる要因と考えられる。我々の研究グループは,自然保護区の設定が違法伐採のみならず森林火災も抑制することで森林資源や生物多様性の維持に貢献していることを検証するため,当保護区を対象としたリモートセンシングや現地植生調査を実施している。本報告では,当保護区内における林床植生の空間変異・多様性について述べる。林床植生は,標高,森林火災等の攪乱,攪乱からの経過時間,林冠木の種類や密度等によって変異に富むことが知られている。当保護区内外に合計17カ所の調査区(面積100m2の円形プロット)を設定し,樹高2m以上の樹木について毎木調査を実施するとともに,調査区当たり4個の方形区(1m2)を設定して林床植物の被覆度を目測で調べた。当保護区内には,標高傾度に沿って,シラカンバ林,カラマツ林,エゾマツ林,ハイマツ林が分布しており,高木層・低木層の種多様性は低かった。林床植生では65種の維管束植物を確認でき,標高,緯度・経度,攪乱の有無,市街地からの距離等,によって群落が異なっていた。保護区外では森林火災の影響を強く受けた植生が見られ,保護区内の植生とは大きく異なっていた。保護区外の植生は火災後の経年数に,保護区内の植生はコケモモやミズゴケ類の被覆度に依存して種多様性が変化する傾向が見られた。


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