| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(口頭発表) B02-05  (Oral presentation)

都市近郊林における人工ギャップ形成後5年間の植生変化

*島田和則, 勝木俊雄, 大中みちる, 岩本宏二郎, 九島宏道, 長谷川絵里(森林総研・多摩)

伝統的な薪炭等の利用がなくなった雑木林(広葉樹二次林)や、木材価格の低迷で十分な管理がされなくなった針葉樹人工林など、本来は人の手により管理されてきた森林の放置が多くみられる。都市近郊域においてこれらの一部では、多様性保全を目指した管理が行われている。そのような管理の一つとして、異齢林施業ともよばれる人工的なギャップ形成がある。既存の研究では人工ギャップ形成によって、林分全体として多様な種組成および構造の複雑さを維持できるといった効果が認められているが、木本種に限った事例が多く、草本まで含めた植物の多様性を十分に検討した事例はない。本研究は多様性保全のための放置林管理のあり方を考えるために、針葉樹人工林、広葉樹林など林相が異なる10調査区において、100㎡の上層木伐採を行って人工ギャップを形成した。この調査区内で伐採の前年およびその後5年間の植生調査を行い、植物の種数や種構成の経年変化について検討した。その結果、伐採後3年間はほとんどの調査区で種数が増加した。4年目以降は調査区ごとに差がみられたが、種数の増加が頭打ちまたは減少に転じた調査区が多かった。さらに、種構成の経年変化について、出現種を主な生育環境で区分し傾向をみたところ、どの調査区でも照葉樹林や夏緑樹林の種は、伐採の前後やその後の経年変化の中で変動は小さかった。一方、非森林生の種はどの調査区でも伐採直後に急増したが、その後の変化は全出現種でみた場合と同様に調査区の間で差異がみられた。このように、人工ギャップ形成による種数の変動は主に非森林生の種によっていた。


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