| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(口頭発表) B02-06 (Oral presentation)
半都市域では、作物種、園芸種を含むさまざまな外来植物が意図的あるいは非意図的導入により広く定着している。外来植物の侵入・定着は、生物多様性を脅かす危機のひとつとして位置づけられている。一方で、在来植物群集が減少している半都市域では、外来植物が在来昆虫のハビタットや餌資源として機能している可能性がある。特に、外来植物はしばしば在来植物と異なる開花時期を示すことから、外来植物は在来植物が不足する時期の送粉者の餌資源として、重要な役割を果たしているかもしれない。
本研究では、在来・外来木本が混在する樹木園(茨城県森林総合研究所)において、主要な在来送粉者であるニホンミツバチを対象に、外来植物の花粉利用率とその季節性を検証した。特に、春から秋にかけて樹木園内の花粉資源候補種を記録するとともに、ニホンミツバチの花粉団子を収集して利用花粉源を同定した。
結果、花粉資源の候補となる在来木本種の開花は春・初夏に多い一方、夏から秋にかけて減少した。ニホンミツバチの利用花粉源として29種が検出された。ニホンミツバチは在来木本の花粉資源を多く利用する一方(50%)、多様な外来花粉資源(作物種、園芸種、雑草種)を季節的に利用していた。特に、外来花粉の利用率は夏および秋に増加し、秋には外来の街路樹種(アキニレ)や侵略的外来種であるセイタカアワダチソウの花粉資源に強く依存していた。
よって、半都市域において外来植物は在来木本の餌資源不足時期を補う季節的役割を果たしていると考えられる。生物多様性評価において、外来植物の定着は負の要素として扱われる。しかし、本結果は、外来種が蔓延する半都市域において生物多様性保全を達成するためには、外来植物の機能を負の側面のみならず多角的に評価する必要性を示唆している。