| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(口頭発表) B02-08 (Oral presentation)
人々は地域のルールや規範を順守しながら生態系管理を行ってきた。全員が協力してルールを守って管理を行えば問題は生じない。しかしもしルールを順守しない非協力者がいると、非協力者が得をするだけではなく、その生態系も崩壊してしまう可能性がある。では、集団内の協力はどのような仕組みによって達成されるのであろうか?
集団内における協力に関する研究は様々な研究分野で行われており、本発表では進化ゲーム理論によるアプローチをとる。多くの理論研究では公共財ゲームが用いられている。このゲームでは、集団メンバーが公共財への投資額(協力の度合い)を決め、投資額の総額に利子をかけたものが全員に均等配分されるという仕組みである。このゲームの適用例としては地球温暖化問題がある。
しかしこれ以外の仕組みの場合もある。例えば、一人が生態系からのサービスを利用し、他のメンバーがその管理活動に当たる場合である。Sudgen (1986)のMutual-aid gameがこれを表したモデルとなる。このゲームでは毎回ランダムに受領者を一人選び、残りのメンバーが提供者となってその受領者を助けるかどうか判断する。この時、提供者が協力したかどうかは評判としてグループ内で共有されるだろう。その提供者が受領者になった時に、評判をもとにして他の提供者がその提供者に協力するかどうかを決めることもあるだろう。そこで、間接互恵性の進化に関する理論研究を参考にして、Mutual-aid gameにおける協力の進化を促進させる条件について数理解析やエージェントベースシミュレーションによって調べた。
結果は次の通りである。協力が進化的に安定になる条件だけではなく、突然変異があると初期の協力者が少数派であっても協力が進化する条件も示した。またグループサイズが大きいほど協力は進化しやすくなることを示した。公共財ゲームでは集団サイズが大きいと協力は進化しないことが知られているが、この結果とは異なる結果を得た。