| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(口頭発表) D01-01 (Oral presentation)
<目的>
現在、イルカを次世代に繋ぐため、飼育や繁殖の重要性が再認識され始めている。一方で、飼育下生まれの仔イルカでは感染症や腸炎が多発し、1歳までの生存率は50%程度と低く、大きな問題となっている。しかし、この問題は感染症や腸炎を予防する乳酸菌をイルカに投与することで改善する可能性がある。そこでイルカ由来の乳酸菌は、イルカを腸内から健康にする製剤になると考え、イルカ腸内に生着している乳酸菌の分離を試みた。
<実験方法>
試料は、うみたま体験パークつくみイルカ島で飼育されているバンドウイルカ(n=12;雌6頭、雄6頭)から採材した糞便を用いた。多くのイルカの腸内に常在する乳酸菌は、イルカに対する健康効果が高いと考え、16Sメタゲノム解析により腸内に常在する乳酸菌を調べた。イルカ由来乳酸菌は、MRS培地を用いて分離し、16SrRNA配列を用いて種同定し、イルカに対して安全性と健康効果が高いと考えられる乳酸菌の性状を調べた。
<結果と考察>
イルカ糞便の16Sメタゲノム解析より、全個体の糞便内でVagococcusの遺伝子断片が検出された。分離された875株の乳酸菌の大部分は、Enterococcus属細菌であり、数株のVagococcus属細菌(TDS1、TDS2、TDS3、TDS4、TDKおよびTDN)が分離された。Vagococcusの系統解析より、今回分離したVagococcusは、水産養殖業において新規の乳酸菌製剤としての利用が期待されているV. fluvialisの近縁種であることが明らかになった。次に、分離したVagococcusの遺伝的差異を調べるためにRAPD PCRを行った結果、TDS1~4は同様のDNAプロファイルを示し、TDKおよびTDNは独自のDNAプロファイルを示した。現在これらVagococcusの性状を解析中である。