| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(口頭発表) D01-02  (Oral presentation)

干潟の底質微生物群集に及ぼす生物遺骸の影響:メタ16s/18sRNA解析による検証

*河本泰岳(東北大学大学院)

生物遺骸は高濃度の栄養物質を提供するホットスポットであり、その直下・周辺に
は特異的な生物群集が形成されると考えられる。実際、深海及び沿岸の海底では、生
物遺骸に特異的な微生物群集が形成されることが、近年の研究で示されている。干潟
は大気と泥と海水が境界面を形成するユニークな環境であるとともに生物の遺骸を始
めとする多くの有機物が堆積する場所である。しかし、生物遺骸が形成するホットス
ポットに関する知見は干潟ではほとんどない。そこで本研究では、干潟環境において
も生物遺骸が供給された際には特異的な微生物群集が形成されるという仮説をたて、
それを検証する実験を行った。
 実験は仙台市東谷地干潟で行った。実験にあたってはポリ容器にマイワシ ( S.
melanostictus
) を底泥と共に詰め、これを5 m間隔で3×3の格子状に9カ所埋設した(
実験区)。また、距離の効果を検証するため、実験区のそれぞれのポリ瓶から10 cm
の位置に1本ずつ、底泥のみ詰めたポリ瓶を埋設し、実験区と同様に埋設した(近傍区
)。さらに対照区として、底泥のみを詰めたポリ瓶を、6本埋設した。埋設後、2、9
および42日目に、実験区と近傍区からは3本ずつ、対照区からは2本ずつポリ容器を回
収し、容器内の底泥を採取した。採取した底泥試料からDNAを抽出し、PCRで細菌
16S rRNAおよび繊毛虫18S rRNA遺伝子の増幅を行い、NGSによるメタ解析を行なっ
た。得られた分子データより、細菌および繊毛虫群集の構造解析を行った。その結果
、両群集ともに実験区と対照・近傍区で種組成など構造に明確な差が見られ、その違
いは特に9日目に大きくなることが分かった。また、繊毛虫の群集構造と細菌の群集構
造との間には有意な相関が見られた。これら結果から、干潟でみられる生物遺骸が導
く微生物群集の特徴と動態について考察する。


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