| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(口頭発表) D01-03  (Oral presentation)

光・外来性有機物の供給バランスと繊毛虫個体群の成長速度

*風間健宏(東北大院・生命), 平間文也(東北大院・生命), 野口拓水(東北大・理), Tyler Tappenbeck(モンタナ大・FLBS), 片野泉(奈良女子大・生物), 土居秀幸(兵庫県立大・シミュ), 山道真人(東大・総合文化), 吉田丈人(東大・総合文化), James Elser(モンタナ大・FLBS), 占部城太郎(東北大院・生命)

水圏に生活する浮遊性の繊毛虫は、藻類だけでなく、有機物を利用する細菌などを餌としており、自身は大型甲殻類プランクトンの餌になることから、生食連鎖と腐食連鎖を繋ぐ生物群である。水圏の腐食連鎖は、内部生産だけでなく陸上由来の有機物も基盤としている。そこで本研究では、一次生産速度と外来性有機物の供給量を操作した野外メソコスム実験を用い、繊毛虫の個体群動態に対する生食連鎖と腐食連鎖、および捕食者の影響を調査した。実験は2017年 夏季 に、モンタナ州 Lost Lake にて行った。メソコスムは直径 1 m、深さ 2 m で、光(遮光なし・90%遮光)×有機物(添加・無添加)×3繰返しの、計12 基を湖上に設置した。メソコスムには、Daphnia pulicaria  を含む大型動物プランクトン群集を加えるとともに、外来性有機物として落葉を破砕してネットで濾したものを添加した。実験期間中、繊毛虫と甲殻類プランクトンは毎週採集して計数した。7月下旬には各メソコスムの湖水を用いて繊毛虫の個体群成長を調べた。具体的には、各メソコスムからそのまま(対照区)、又は100 µm目合いのネットで濾し(Daphnia除去区)、それぞれ5 Lの透明バッグに詰め、現場培養した。この培養前後での細胞密度の変化から繊毛虫の個体群成長速度を調べた。メソコスム実験の結果、遮光や有機物添加の有無に関わらず、高密度のDaphnia存在下では、繊毛虫の生物量が著しく低かったが、実験期間後半にDaphniaが減少するにつれて、外来性有機物を加えた実験区で繊毛虫生物量の顕著な増加が見られた。繊毛虫個体群の成長速度を調べたところ、Daphniaは成長速度に負の効果を与え、有機物添加は正の効果のあることが分かった。以上の結果から、浮遊性繊毛虫を経由する生食連鎖と腐食連鎖の相対的な役割を議論する。


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