| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(口頭発表) D01-04  (Oral presentation)

ヒサカキの花の蜜に住む微生物

*辻かおる(京大・生態研センター)

動物や植物で広くみられる雌雄差は、種内の形質変異の一つで、ときに種間の差以上に顕著な場合もある。近年、種間の形質の違いだけではなく、種内の形質の違いもまた、多くの種で構成される群集構造に影響を与えることが改めて認識され、注目を集めている。雌雄差が、群集構造に影響を与える事例として、寄主の雌雄差が、寄主利用を介し、生物群集に影響を与える場合が考えられる。そこで、本研究では、寄主を利用する生物の群集構造は、寄主の雌雄で異なる、という仮説をたて、検証を行った。材料として、雌雄異株の木本ヒサカキと、その花蜜に住む微生物を用い、雌雄の花で蜜の中にすむ微生物群集が異なるのかを調査した。その結果、花蜜からはMetschnikowia属の酵母を含む菌類やAcinetobacter属を含むバクテリアが検出され、これら微生物は雌花より雄花からより多く検出された。また、バクテリアの構成種も、雌花と雄花で異なっていた。さらに、これらの微生物群集の違いはどのようにして生み出されるのかを調べるため、花蜜の測定および、操作実験を行い、花の雌雄差は微生物の群集形成過程において様々な効果を持つことを明らかにした。これらのことは、寄主における形質の雌雄差は、その種を利用する生物の群集形成および群集構造に影響をもたらすことを示唆している。


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