| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(口頭発表) D01-11  (Oral presentation)

資源分配の不平等性と個体群動態モデル

*穴澤正宏(東北工業大学)

一般に、離散時間の個体群モデルは季節的に繁殖する生物の個体群動態をモデル化するのに使われる。その中で Hassell model はパラメータの一つ(指数)を変えることで、コンテスト型からさまざまな程度のスクランブル型の再生産曲線を表現できる便利なモデルとして広く使われている。Hassell modelにおけるこのような指数の値による密度依存性の違いは、素朴には個体間の資源分配の不平等性の程度の違いを反映しているとこれまで考えられてきた(コンテスト型の曲線は不平等な資源分配、スクランブル型の曲線は平等な資源分配を反映)。しかし、このモデルは個体群レベルの現象論的なモデルとして導入されたもので、この素朴な考えが、より下位の過程である個体間の資源競争に基づいて実際に確かめられたことはこれまでなかった。そこで、この研究では個体間の資源分配についての考察から Hassell model を第一原理的に導出することを試み、その指数を資源分配の不平等性と関係づけることが可能か考察した。その結果、個体が一度に取得できるのはある単位量の資源であり、その単位量の資源をめぐる個体間のランダムな競争が何度も繰り返される、という個体レベルの資源競争モデルを仮定すると、実際にその指数が資源の不平等性と関係しているようなHassell model を導出できることがわかった。また、導出された Hassell model に対して、資源の分配が最も不平等な場合と最も平等な場合という特別な場合を考えると、 Beverton-Holt model とRicker model がそれぞれ得られる。さらに、個体の繁殖力に関わる仮定をより現実的なものに変更したとき導出される個体群モデルはどのように変化するかも議論する。


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