| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(口頭発表) F01-11  (Oral presentation)

未知シグナルに対する反応の学習と進化

*里居伸祐(九州大学), Tom Sherratt(Carleton University)

捕食者が未知の被食者に対してどのように振る舞うかという問題は、捕食者に対する防御および擬態を考える上で重要な問題である。捕食者が新規被食者に遭遇した時、その被食者を攻撃するか否かを決定しなければならない。攻撃することにはその被食者が充分な防御を備えている場合のリスクが伴うが、被食者が発するシグナルに対して攻撃するのが良いのか、避けるのが良いのかという情報が得られる。Sherratt (2011) では、このような問題を学習モデルで表現し、どれくらいの数のサンプリングを行うのが最適なのか議論を行っている。しかしながら実際には、学習によるものではなく本能的に忌避するシグナルや好むシグナルが存在することは良く知られるところである。我々は、この捕食者側の判断が学習によるものだけでなく、進化的にも影響を受けると考え、モデルを構築した。具体的には、学習モデルはSherratt (2011)と同様のものを用い、そのうえで未学習状態の事前分布が進化すると考えた。つまり、一度も被食者に出会わない状態でも、捕食者は未知のシグナルに対して攻撃したほうが良いのか、しないほうが良いのかという何らかの評価を持っているとし、この本能的な情報が進化すると仮定した。本研究から、環境変動、つまり被食者の性質に変化がある場合はあいまいな事前分布を持ち、学習によって行動を変化させていく形質が進化する事がわかった。また、被食者の毒性が強い、あるいは防御を備えた被食者の頻度が高い場合には、全く被食者を攻撃しない本能的忌避を行う形質が進化する事がわかった。


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