| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(口頭発表) G01-09 (Oral presentation)
Heptageniidae(ヒラタカゲロウ)科Ecdyonurus (タニガワカゲロウ) 属は日本列島から11種が報告されており, その内の5種は日本固有種と考えられている。現在, タニガワカゲロウ属は,いくつかの分類群に細分化されるなどヒラタカゲロウ科の中での分類学的な地位は未だ確立されてない。Ecdyonurus属内の種間関係や種分化を明らかとすることを最終目的とし, 本研究では,八重山諸島と台湾に生息するカゲロウEcdyonurus hyalinus, Ecdyonurus fractus, Afronurus sp.を材料に, 遺伝的構造をミトコンドリアCOI遺伝子と16S r遺伝子の一部を使って調べた。その結果, E. hyalinus, E. fractusは与那国海峡によって遺伝的交流が絶たれ, 高度に分化が生じていた。
台湾固有種であるAfronurus chihpenensis, Afronurus floreus, Afronurus nanhuensisのいずれかと考えられるAfronurus sp.は台湾中央山脈によって分化していたが, 加えて同所的に分化した2集団が認められた。これらの集団はTaiwan Wildlife Genetic Material CryobankのCOIデータからはA. chihpenensisに分類された。しかし, これらAfronurus属の3種は幼虫で記載されたが, 形態による分類が困難であり, 今後より詳細な調査が必要である。
Ecdyonurus hyalinus, Ecdyonurus fractus, Afronurus sp. に日本列島から得られたEcdyonurus yoshidae, Ecdyonurus viridis, Ecdyonurus tigrisを加え, COI遺伝子と 16Sr遺伝子を結合した1166塩基について系統解析を行った。その結果, それぞれの種の単系統性が強く支持されると共にE. hyalinus, E. yoshidae, E. viridis, Afronurus sp.を含む系統, およびE. fractus, E. tigrisを含む系統に分けられ, 形態的特徴による分類とよく相応した。