| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(口頭発表) G02-03 (Oral presentation)
人類は生態系から様々な恵み(生態系サービス)を得て生活している。しかし、生物種や群集と生態系サービス供給との関係についてわかっていない部分は多い。生産性や栄養塩循環など一部の生態系サービスと生物多様性の関係においては、より多様な生態系サービスの供給には種多様性よりも機能的・系統的多様性が重要となる可能性が示されてきている。しかし、山菜供給、美的・宗教的価値など、種と生態系サービスの関係に文化的要素が大きく影響するようなものを中心として、形質・系統との関係が検証されていない生態系サービスも多い。そこでこの研究では、そのような15種類の生態系サービスに対する国産主要樹種34科155種の有用性について、(1)各有用性の有無は形質・系統でどの程度説明できるか、(2)どの形質が有用性をよく説明するか、を検証した。
有用性の有無については文献調査を行った。形質には測定や文献より得られた葉や材、花、果実などの17形質を用いた。勾配ブースティングマシーンを用い、形質または科名による有用性の有無のモデリングを行った。モデルの性能は有用性の種類によって大きく異なったが、形質の方が系統よりもよく有用性を説明する場合が多かった。この結果は、形質と有用性の因果関係を保証するものではないが、検出された形質と有用性の関係の多くは合理的なものであり、有用性の少なくとも一部がこれらの形質によって決定されていることを示唆している。また、葉の強度や果実の大きさなどは複数の有用性に対し重要な説明因子であり、有用性の種類によって異なる影響をもつ場合があった。これは、より多様な生態系サービスの供給には形質の多様性が不可欠であることを示唆している。今後は、この結果に基づき、生物多様性が生態系サービスの多面性を支えるメカニズムの解明に取り組みたい。