| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(口頭発表) G02-06  (Oral presentation)

草原の代替生息地としての植林伐採地の可能性‐植物とチョウの視点から‐

*大脇淳(山梨県富士山研), 小柳知代(東京学芸大学), 前田沙希(山梨県富士山研)

近年、防火帯や伐採地などは草原の代替生息地として機能することが期待されているが、実際にどの程度機能しているかは十分に評価されていない。本研究では、富士北麓の半自然草原とカラマツ植林の伐採地で植物とチョウを調査し、草原の代替生息地としての伐採地の有効性を評価した。
各サイトには200mのトランセクトを3本設置し(広大な一サイトだけ6本)、2016年5月~10月に毎月一回調査した。植物はトランセクトを10分割し、開花している植物種の出現区画数(0~10)を記録した。チョウはトランセクト上で観察された種と個体数を記録した。また、6月末から7月上旬にはトランセクトの両脇に20個の1 m2コドラートを設置し、草丈と被度を記録した。サイト単位では、植物種数、チョウ種数、チョウの食草の豊富さを伐採地と草原で比較した。トランセクト単位では、草丈、被度、伐採地か草原か、花の量、食草の豊富さと植物やチョウの種数との関係を解析した。
サイト単位の比較の結果、植物とチョウの種数は伐採地と草原の間に差はないが、RDBの植物とチョウの種数は草原の方が多かった。RDBチョウ類の食草は特に草原に偏っていた。RDB種については、植物、チョウともに伐採地のみに出現する種はほとんどなかったが、チョウでは半数の種が伐採地と草原の両方に出現した。トランセクト単位の解析の結果、植物、チョウの種数ともに草丈の影響が大きかった。伐採地では、植物種数は草丈の増加とともに単調に減少し、チョウの種数は草丈と関係がなかったが、RBDのチョウの種数は草丈と凸型の反応を示した。
以上より、伐採地は草原に生息する全ての種の生息地にはならないが、一部の絶滅危惧種(特にチョウ)の重要な生息地になっていた。伐採地では、植物種数は下刈りの停止後の高茎化とともに低下し、RDBチョウ類は伐採後適度な年数で侵入・定着しているものと考えられた。


日本生態学会