| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(口頭発表) G02-07  (Oral presentation)

食糧危機を解決する昆虫肉 ~気候変動シナリオによる土地利用シミュレーション~

*Randy Nathaniel MULIA(兵庫県立大学大学院, 秀幸土居)

2050年までには、世界人口が90億人を超えるという予測がなされている。これら増加するに世界人口への食料供給が求められる。よって将来的に、食料を大幅に増産させる必要があるが、農業に利用可能な土地面積には制限がある。そのような土地の制約の中で、新しい食糧生産法を模索していく必要がある。特にタンパク源である家畜生産は、土地面積を必要とすることから将来の生産拡大へ大きな問題がある。このような食料不足に対して一つの解決方法として、昆虫肉があげられる。昆虫肉は飼料変換効率が高く、その生産への土地利用が少ないという利点がある。また、栄養学的に昆虫肉は一般の家畜肉と比較して同等である。
本研究では、気候変動に連動した将来の人口増加や経済発展を予測した4つのSpecial Report on Emission Scenarios (SRES)シナリオを想定して、様々な昆虫食を含めた家畜肉生産割合から、将来の全世界および各国(159カ国)についてシミュレーションを行った。4つのSRESシナリオから予想される人口、GDPからカロリー需要を算出し、それに家畜肉生産割合と家畜ごとの土地利用面積から、2100年までの全世界および各国での土地利用をシミュレーションした。
その結果、全世界的な傾向として、家畜肉の割合の中で昆虫肉が高い割合を占める場合は、いずれのシナリオにおいても現在の牧草地面積より拡大することなく家畜生産が可能であることが多くみられた。また、国ごとの解析においては、それぞれのシナリオの最大になる土地利用は違っていたが、シナリオB2(環境に十分配慮した経済)においては、全ての国で現在の牧草地面積より拡大することなく生産が可能であった。本研究結果から、今後増加する土地利用を軽減するには、昆虫食を増やすことが最適であると考えられた。


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