| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(口頭発表) G02-09  (Oral presentation)

集約した環境DNAサンプルを利用した淡水魚類の環境DNAメタバーコーディング~その有用性と制約について~

*佐藤博俊(龍谷大・理工, 京都大・院・人環), 十河勇樹(龍谷大・院・理工), 土居秀幸(兵庫県大院・シミュ), 山中裕樹(龍谷大・理工)

環境DNAメタバーコーディングは、直接捕獲による調査と比較して小さな労力で高い検出感度を期待できる手法であり、水生動物の多様性を評価する手法として近年広く用いられている。しかし、空間的・時間的に大規模な調査に対して環境DNAメタバーコーディングを適用する場合には、検出感度を落とさずに、いかに調査に要する労力を軽減できるかが重要な課題である。本研究では、同一地域から採取した水試料を個別に解析する場合(個別サンプル)と、同一地域から採取した複数の水試料を一つに集約して解析を行う場合(集約サンプル)とを比較して、後者の手法で十分な感度で魚類の多様性を評価できるかどうかについて検討した。まず、野田沼、曽根沼、伊庭内湖と西ノ湖という4つの琵琶湖内湖において、それぞれ9地点(西ノ湖のみ17地点)から500mLの水試料を採取した。次に、水試料に含まれる魚類のミトコンドリア12SrRNA遺伝子領域をイルミナ社のMiSeqで配列を解読した後、メタバーコーディングによって魚類の種組成を調べた。この際、集約サンプルでは、ライブラリの繰り返しをそれぞれ15個ずつ作成し、別々に魚類の種組成を調べた。解析の結果、個別サンプルでは、4つの内湖において、それぞれ31,22,33および31種類の魚類が検出された。一方、集約サンプルでは、それぞれ全ライブラリで30,20,29および27種類の魚類が検出された。各々の個別サンプルで総リード数の0.05%未満のリード数を占めた魚種は、集約サンプルではほぼ検出されなかった。また、集約サンプルでは、同一の内湖のライブラリの繰り返し間ではほぼ同一の魚種が検出された。以上の結果から、集約サンプルを用いた環境DNAメタバーコーディングは、魚類群集を網羅的に検出する手法としては適していないことが分かった。しかし、地域の代表的な魚種を検出できることから、労力を軽減しつつ、複数の地域間・時期間で魚類群集を比較する手法としては有用であることが分かった。


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