| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(口頭発表) I01-05 (Oral presentation)
樹木が成長するにはCO2を葉内に取り込み光合成する必要があるが、その際に蒸散として水が消費される。特に根圏が乾燥した環境では、消費された水を吸い上げる際、通水器官に強い負荷がかかる。樹木は、変動する環境に合わせながら、成長と水消費および通水阻害の危険とのバランスを調節することが知られる。このバランスについて、光合成、そして通水阻害の回避に極端な重きを置いた生理特性(isohydric; isoとanisohydric: aniso)、およびその中間型を採る樹種が存在するこことが知られている。樹木の生死生存に強く影響を及ぼしうる要素であることから、気候変動など乾燥に晒された樹木の生理特性のiso-anisoの軸に沿った変化は、その成長や生存を予測する上で重要な知見である。だがここで挙げた変化、すなわち種内変異の知見は、生理特性のiso-aniso軸に沿った種間差を調べた研究と比べ、研究例も、また計測された乾燥の強度の幅も極めて限定的であり、上記のような予測をするには知見が不足している。最も幅広い湿潤—乾燥環境に渡って分布する植物として、地下水依存型樹種が挙げられる。北米の樹種には、渓畔林から地下水に到達できない少雨地域に分布する種があり、異なる水環境に成育するこれら樹種個体の生理特性の解明は、上記予測の大きな助けとなると考えた。そこで本研究では、ハワイの乾燥地に定着した南米原産の地下水依存型樹種、Prosopis pallidaを対象に、葉のCO2取り込み口である気孔の調整と、その水分状態である水ポテンシャルに関連した生理特性を調べた。地下水帯に到達できる個体とできない個体を対象に、生理特性の差をiso-anisoを軸に調べ、極端な乾燥に晒された樹木が採る生理特性、そしてその生理特性が成長や通水阻害に及ぼす効果を調べた。