| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(口頭発表) J01-01  (Oral presentation)

外来昆虫ブタクサハムシの北海道における2つの個体群:光周性と分布拡大の違い

*田中幸一(農研機構), 村田浩平(東海大学)

外来生物が移入地に定着し分布を拡大するためには、移入地の環境に適応しなければならず、その過程で特性が変化することがある。外来生物に対する的確な対策を講じるためには、外来生物が新たな環境に適応・進化する過程とその機構を解明することが重要である。演者らは、北米原産の外来昆虫であるブタクサハムシにおける生殖休眠誘導に関する光周性が、日本に移入後に変化したこと、全国各地で採集した系統について緯度、標高に沿った地理的勾配があることを報告した。しかし、北海道苫小牧個体群の光周性は、この全国的な傾向から外れていたため、同個体群の分布拡大や特性変化の動向および北海道の他の地域での発見が注目されていた。2014年9月に、函館市内のブタクサで、本種を多数発見した(しかしその後、2013年に既に発見されていたことが判明)。それ以後、函館市周辺および苫小牧市周辺での分布調査および2つの個体群の光周性実験を行ってきた。その結果、興味深いことが明らかになりつつある。函館個体群の25℃、13L:11Dにおける休眠率は非常に高く、青森県弘前個体群に近い値であった。一方、苫小牧個体群の休眠率は、関東北部から東北南部の個体群に近い値であり、函館個体群の値と大きく異なった。このことから、函館個体群と苫小牧個体群とは、移入経路が異なると考えられる。さらに、分布拡大に関しても、両個体群は異なっており、苫小牧個体群が分布をほとんど拡大していないのに対し、函館個体群は、北方へは内浦湾沿岸を八雲町中部まで、西方へは日本海沿岸(江差町の一部と乙部町の一部)まで分布拡大したことが明らかになった。


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