| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(口頭発表) J02-01 (Oral presentation)
ニホンライチョウ(Lagopus muta japonica)は、南アルプスを含むいくつかの山域で絶滅が危惧されている。ニホンライチョウの系統調査から山域毎に系統が異なる可能性が示唆されている。また、それぞれの生息地毎に食物が必ずしも共通しないこともあって、異なる地域由来のニホンライチョウの人為的な交流は避けることとされている。ニホンライチョウは、草食性が強いため、消化や解毒に対して腸内細菌叢の果たす役割が大きいことが想定されるが、その地域差については検討されてこなかった。本研究では、北アルプス(御岳、乗鞍岳、焼岳、常念岳、大天井岳、立山)、南アルプス(北岳)の成ニホンライチョウの新鮮盲腸糞を採取し、NGSによる細菌16S rRNA遺伝子の網羅解析を行ったので報告する。試料は北アルプス20検体、北岳3検体で、縄張りの異なる個体由来の試料を採取した。ライチョウの性別は、一部不明な場合が含まれる。全体で、約8000のOTUが検出されたが、ある1個体に1リードしか検出されないものを除くと約7600OTUでこれを解析の対象とした。リード数の多い上位9OTUで、全リード数の70%以上を占め、99OTUで80%となった。上位9OTUの細菌は、Olsenella sp.、Shuttleworthia sp.、 Actinomyces sp.、 Bifidobacterium sp.、Megasphaera sp.、 Alkalibaculum sp.の2種、 Slackia sp.、Robinsoniella sp.に該当した。Olsenella sp.とBifidobacterium sp.は、広義の乳酸菌で、乳酸利用性のMegasphaera sp.との共生系が確立していることが示唆された。主成分分析やクラスター解析では、地域差に基づく明確な分離は認められず、ニホンライチョウの腸内菌叢構成の地域差があまりないことを示唆する結果となった。