| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(口頭発表) J02-03 (Oral presentation)
環境DNA分析は、環境水に含まれるDNAを分析し水生生物の生息現況を評価することができる手法として注目されている。その中でも次世代シーケンサー(MiSeq)を用いた環境DNAメタバーコーディング法は、水試料のみから魚類の種組成を網羅的に明らかにできる強みがある。本研究では、河川およびため池の魚類相調査に捕獲調査と環境DNAメタバーコーディング法を用いた。また、両調査手法で得られたデータを比較した上で、それぞれの検出の特性を評価した。調査は2016年10月と2017年7月に兵庫県加古川市の草谷川と谷郷池で行い、環境DNA分析のための水試料を採取した後に捕獲調査を行った。その結果、捕獲調査では、2016年10月には草谷川で16種、谷郷池では2種が確認され、2017年7月には6種と1種がそれぞれ確認された。一方、環境DNA分析では2016年10月に草谷川で22種、谷郷池で7種、2017年7月には21種と7種がそれぞれ確認された。いずれの結果でも、捕獲調査で確認した種はすべて、環境DNA分析でも検出された。また、2回の調査で共通して確認された種数は、捕獲調査の場合は草谷川では6種 (草谷川での全捕獲種数の38%) 、谷郷池では0種 (同0%) だった。一方、環境DNA分析では、草谷川で21種 (草谷川での全検出種数の95%)、谷郷池で6種 (同75%)だった。この結果より、捕獲調査で2回とも確認された種の割合は環境DNA分析に比べて少なかった。さらに、谷郷池は閉鎖的な空間であるにも関わらず、2回の捕獲調査で同じ種が捕獲されなかった。以上のことから、環境DNA分析は捕獲調査と比較して、異なる時期に調査を行っても検出結果が比較的安定し、得られる結果がよりばらつきにくい調査手法であると考えられる。