| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(口頭発表) J02-04 (Oral presentation)
日本に生息する淡水魚類の多くは、生息地の減少や外来種の侵入などの影響から絶滅の危機的に瀕しており、保全対策が急務となっている。これらの種を保全していくためには、どの場所にどの種が生息しているかなど、水域における種や魚類相の現状をすみやかに把握する必要がある。近年、水サンプルから生息する魚類を網羅的に検出できる環境DNAメタバーコーディング手法が確立されており、短期間での大規模な魚類相調査が可能となっている。本研究では、兵庫県の六甲山周辺地域の河川に環境DNAメタバーコーディング手法を適用することで、各河川に生息する魚類相やその傾向を明らかにすることを目的とした。地域内の河川225地点で調査を行ったところ、43の在来種と15の国内外を含む外来種を検出した。在来種にはカワムツやヨシノボリ類のほかにニホンウナギやアブラボテなどが、外来魚にはオオクチバスやブルーギル、タイリクバラタナゴなどがそれぞれの種リストに含まれた。過去約15年間の調査記録で確認されている魚類のうち、約8割にあたる種が検出され、外来魚ではこれまで見られていなかった2種が新たに検出された。各地点に出現する魚類の種数は、六甲山周辺地域のなかでも表側とよばれる都市部周辺の河川で少なく、裏側を流れる各河川で多い傾向がみられた。出現する魚の種構成を用いて河川ごとの類似度を推定したところ、六甲山表側の河川群の大部分は1つのグループにまとまり、最終的に加古川へと合流する水系群と武庫川上流部は同一のグループに含まれた。今後採捕調査などによって調査地や河川ごとの魚種情報を精査していくことで、当地域における希少種などを含む魚類の多様性保全にむけた重要な情報になると考えられる。