| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(口頭発表) J02-10 (Oral presentation)
種数や種の分布パターン決定要因を明らかにすることを目的とした群集生態学では、これまで森林の種子食性昆虫や鳥類、岩礁潮間帯、湖やウミガメの体表上などのパッチ状環境に生息する様々な生物を対象として研究が進められてきた。昨年度は2系列のカフェチェーンを対象として行った調査の結果を報告したが、それぞれの価格帯が異なること、対象としたカフェチェーンの分布に地理的な偏りが見られること、また平日か休日か、時間帯による客層の変化などを考慮していなかったことなど複数の問題点があった。そこで本研究では、調査対象を首都圏(上野~秋葉原エリアと六本木・麻布十番エリア)に点在するメジャーカフェチェーン(S・V・T)に広げ、ノートPCユーザー(A社製OS・M機とM社製OS・W機)を対象に出現記録をまとめ分布傾向を比較した。
調査は2016年11月から2017年7月まで、1店舗あたり30回以上のサンプリングができた店舗を対象とし、店内では座席数とそれぞれのPC個体数をカウントした。W機については可能な限りメーカーを同定し、同定の困難な場合についてはW sp.としてそれぞれの個体数を記録した。
本研究で調査地点に出現したノートPCは20種であった(W sp.を除く)。チェーンの系列を問わず、面積(座席数)に応じてノートPC種数は増加し、典型的な種数-面積曲線を示した。累積種数曲線は20回目のサンプリングでおおよそ飽和に達した。また、M機ユーザーの個体数はチェーン間で明確に違いが見られた。
本研究で対象としたカフェとノートPCユーザーは、座席数を環境収容力、PCのメーカーを種とみなすことができる。また、毎年ノートPCシェアが集計されていることから、各種のソース個体群サイズを推定することも可能である。本研究はノートPCユーザー出現傾向による店内の回転率予測や新規店舗開拓のマーケティングへの応用など、これまで群集生態学で議論されてきた成果を社会に還元する可能性を示すものである。