| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-009  (Poster presentation)

藻食性腹足類の食性解析:葉緑体23S rDNAマーカーを用いた試み

*吉田幸子, 柚原剛, 大槻朝, 占部城太郎(東北大・生命)

 潮間帯の岩礁域には多くの腹足類が生息している。それら腹足類の多くは付着藻類を主要な餌にしている藻食者と考えられている。一般に、餌資源が共通している種間では競争関係が働く。したがって、食性の良く似た生物種の同所的な共存は難しいはずである。それにもかかわらず、潮干帯では腹足類の複数種が同所的に生息していることは稀ではない。これら同所的に生息している腹足類は種間で同じ藻類を餌としているのだろうか。それとも、同じ藻類食でも、種によって資源として利用する藻類種は異なるのだろうか。これまでの潮干帯藻類食者に関する研究では、餌となる微細藻類は一括して扱われることが多く、餌の種レベルでの解析は殆ど行われて来なかった。そこで本研究では、次世代シーケンサーによるDNAメタバーコーディング法を用いて腹足類の消化管内用物を解析し、同所的に生息している腹足類の種間で餌資源の重複度について調べた。具体的には、宮城県沿岸の岩礁にて同所性が認められる複数種の藻食性腹足類を採集し、消化管内容物を取り出して微細藻類のDNAメタバーコーディングを行った。また、腹足類が環境中のどの藻類を利用しているかを把握するため、バックグラウンドとして基質上の藻類も採集し解析した。環境中の藻類および消化管内容物DNAのPCRには、藻類DNAの網羅的な増幅が期待できる、葉緑体23S領域を増幅対象としたユニバーサルプライマーを用いた。また、本調査地で採集された個体の中には、形態による種判別が困難な個体もみられたため、種同定にはCOI解析を用いた。本発表では、消化管内容物から得られた藻類種を比較することによって、餌資源の違いが複数種の腹足類の共存に貢献しているかを考察する。


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