| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-014  (Poster presentation)

シカによる下層植生の食害がミズナラのシュート成長に及ぼす影響

*水谷あゆみ(酪農大・農食環境), 東若菜(京大院・農), 平井岳志(京大フィールド研), 石原正恵(京大フィールド研), 金子命(酪農大院・酪農), 高柳敦(京大院・農), 松山周平(酪農大・農食環境)

シカによる下層植生の食害がミズナラのシュート成長に及ぼす影響
*水谷あゆみ(酪農大・農食環境), 東若菜(京大院・農), 平井岳志(京大フィールド研), 石原正恵(京大フィールド研), 金子命(酪農大院・酪農), 高柳敦(京大院・農), 松山周平(酪農大・農食環境)

 シカの食害による森林生態系への影響には、樹皮剥ぎや実生の食害といった直接的な影響と、下層植生衰退が土壌や土壌動物群集を改変するといった間接的な影響があるが、高木への間接的な影響を調べた研究はほとんどない。そこで本研究では、シカによる下層植生の衰退が高木の成長に及ぼす間接的影響を明らかにするために、ミズナラの当年枝の成長、周囲の下層植生と土壌を同時に調べ、防鹿柵内外で比較した。
 防鹿柵内外のミズナラ林冠木(柵内6本、柵外15本)について、当年枝の成長率、葉の炭素・窒素濃度、周囲の下層植生バイオマス、土壌の全炭素濃度、全窒素濃度、純窒素無機化速度、アンモニア態窒素濃度を比較した。当年枝の成長率では、当年枝と一年枝の長さ、基部直径、バイオマスを調べ、一年枝での測定値に対する当年枝での測定値として評価した。
 ミズナラでは、当年枝の長さの合計、当年枝バイオマスの合計において有意な柵の効果が認められ、いずれも柵外で当年枝成長率が小さいことを示した。下層植生バイオマス、葉窒素濃度は柵外で有意に低く、下層植生の衰退により高木が利用できる窒素が少ないことを示唆した。土壌の全炭素濃度、純窒素無機化速度に差はなかったものの、土壌全炭素濃度とアンモニア態窒素濃度はいずれも柵外で有意に低かった。これは、下層植生の衰退が土壌環境の変化を通じ、間接的に高木の当年枝成長を抑制していることを示唆した。これらの結果は、シカの採食による下層植生の衰退は間接的な影響を通じて森林の生産性や更新に影響を与える可能性を示している。


日本生態学会