| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-038  (Poster presentation)

長野県上伊那地方の異なる立地条件の水田地域におけるゲンゴロウ類群集の構造と環境要因との関係

*山地祥子(信大学・院・農), 大窪久美子(信大学・農)

 近年、水田地域の止水環境を主な生息地とするゲンゴロウ類は減少や絶滅が危惧されており、本研究では上伊那地方における本分類群の群集構造や環境選好性を明らかにし、保全策の検討を行うことを目的とした。中山間および市街化の立地の違う5調査地域を選抜し、1地域は直径500m円内とした。群集調査はすくい取り法とトラップ法を併用し、年6回実施した。立地環境調査は土地利用および水質、水深、リター量、植被率、水生植物相に関して行った。
 全調査期間で全期間に計11属14種5538個体を確認し、マルガタゲンゴロウやゲンゴロウなど計6種のRDB種が出現した。全地域の共通種はチビゲンゴロウなど3種で、中山間地域の指標種はクロゲンゴロウなど5種だった。市街化地域ではコウベツブゲンゴロウが出現した。TWINSPAN解析では、群集は止水環境の違いで大きく分類された。選好度指数からみると、生活史段階で選好する環境が同様あるいは、異なる種を確認した。また、土地利用では土水路面積の割合が大きいことが成虫5種や幼虫3種の個体数密度を高める、正の相関があった。DCA解析では、水田や土水路(水田)の環境はチビゲンゴロウの成虫および幼虫が指標種で、DOやEC、pHが高く、オモダカなどが生育した。ため池や土水路(休耕田)はクロズマメゲンゴロウの成虫と幼虫が指標種で、水深が深く、リター量が多く、DOやECが低く、ミゾソバなどが生育した。
 本地域は県内全生息種の44%が出現し、ファウナは豊かだった。中山間地域は条件の異なる止水環境毎に、異なる群集が認められた。特に土水路の存在は多様性を上げる要因だった。土水路は水田よりも深く、水温が低い条件であり、このような恒久的水域が重要だった。ゲンゴロウ類の群集構造は止水環境の種類や土地利用状況、微環境などによって異なり、地域内に多様な条件を維持することが保全上重要だと結論付けられた。


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