| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-039  (Poster presentation)

大和川水系における外来種による生物的抵抗の可能性

*江藤美緒, 遊佐陽一, 山本直(奈良女子大学)

近年、産業活動のグローバル化とともに、多くの外来種が世界中の生態系に定着している。外来種が新たな生態系に侵入し定着できるかどうかを決める重要な要因の1つとして、その生態系内の種多様性があげられる。生態系内において生物多様性が高いほど生物的抵抗がはたらき、外来種が侵入しにくいと考えられており(生物的抵抗仮説)、従来、この生物的抵抗を担うのは在来種だとされてきた。しかし、環境変化により在来種が減少し、外来種が多く侵入している現代では、在来種と外来種が混在する新たな生態系が構築されつつある。このため、在来種だけでなく、先に定着した外来種による新たな外来種に対する生物的抵抗についても検討する必要がある。新たに生態系に侵入した外来種としてスクミリンゴガイPomacea canaliculata(以下:本種)が挙げられる。そこで本研究は、新たな外来種である本種に対して、在来種や既に定着している外来種による生物的抵抗がみられるかどうかを野外調査の結果から明らかにすることを目的とした。奈良盆地における大和川水系の小河川や水路など26地点で動物の種数および個体数の定量的な調査を行ったところ、本種の個体数と動物種数との間に負の関係がみられ、本種に対する生物的抵抗の存在が示された。さらに、動物種を外来捕食者、外来非捕食者、在来捕食者、在来非捕食者の4つに分類して本種の個体数との関係を調べた結果、外来捕食者種数との間にのみ負の関係がみられた。このことより、淡水生態系において、先に定着した外来種の捕食者によって、新たに侵入してきた外来種に対する生物的抵抗が存在することが示唆された。このような外来種による生物的抵抗は、他の多くの生態系でもみられる可能性があり、今後さらに重要性を増すと考えられる。


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