| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-085  (Poster presentation)

糞から抽出したミトコンドリアDNAの塩基配列による鳥類の種同定

*田原大督(大阪市立大学・理), 岡本真帆(大阪市立大学・院理), 大矢樹(大阪市立大学・院理), 伊東明(大阪市立大学・院理), 名波哲(大阪市立大学・院理)

種子植物は基本的に種子の段階においてのみ生息域を拡大することができる。日本の暖温帯に発達する照葉樹林では、構成種の70~85%が鳥類による被食型種子散布植物であることが分かっており、古くから鳥類と被食型種子散布植物との共進化が指摘されている。鳥類により被食される果実の多くは多肉果であり、果実食性鳥類は採食した果実の果肉だけを消化し、種子を発芽可能な状態で糞として排出するかペリットとして吐き出す。鳥類による種子散布の研究についてはこれまで、胃の内容物を調べることや、嘴幅と果実サイズの関係、鳥類の大きさと散布距離の関係、さらには散布者の採食行動を直接観察するというようなことが行われてきた。採食行動の直接観察は、鳥類にとって餌となる果実の一部は分かるが完全な餌の把握は不可能に近い。林床から集めた鳥類の糞から、採食した種子と糞の落とし主が同定できれば、直接観察だけではわからなかった植物と鳥類の関係が見えてくる可能性がある。糞の形や色だけで鳥類の種を同定するのは難しいため、DNAバーコーディングを用いた種同定が有効である。DNAバーコーディングを用いた鳥類の種同定ではこれまで、ミトコンドリアDNAのシトクロムCオキシダーゼ I (COI)領域が用いられてきた。このCOI領域の648bpの塩基配列は種を同定する上では十分な有効性があることが知られている。COI領域の塩基配列を利用した先行研究のほとんどは筋肉や血液といった侵襲的試料から同定が行われており、非侵襲的試料である糞を用いた研究例は少なかった。本研究では、落とし主である鳥類の種が判明している糞から抽出したミトコンドリアDNAのCOI領域の塩基配列比較により種を同定する手法を確立する。


日本生態学会