| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-088  (Poster presentation)

アブラナ科草本を利用する植食性昆虫の群集構造:摂食ギルド間の比較

*黒田志織, 岡村悠, 村上正志(千葉大・院・生物)

植物と植食性昆虫の間には、しばしば共進化、軍拡競争が見られる。アブラナ科草本は二次代謝産物としてグルコシノレート(GLS)を保有し、植食性昆虫に対する防御を行っており、GLSの構成や量には種間で大きな違いがあることが知られている。一方、植食者は多様な戦略でこれに対抗していることが知られている。本研究では、アブラナ科草本の系統関係やGLSプロファイル、また植食性昆虫の摂食様式の違いといった要因が、アブラナ科草本を摂食する植食性昆虫群集構造に与える影響について評価する。サンプリングは2017年の4月から6月に千葉県市原市、長野県安曇野市、福島県福島市、北海道苫小牧市、夕張市、千歳市の6地点で行い、アブラナ科草本12属19種から昆虫を採集した。採集した昆虫のうち、アブラナ科植物を摂食すると考えられるのは42種、約2700個体であった。植物種間で昆虫群集の類似性をJaccard指数により比較した結果、タネツケバナ属の植物3種において昆虫群集構造が類似していた。また、食草の生息環境が植食者の群集構造に影響する可能性も示唆された。一方、アブラナ科草本の系統学的距離は、植物種間の類似度と関係がなかった(mantel testによる)。また、昆虫の分布(食草選択)にアブラナ科草本の系統関係の影響が見られるか系統シグナルを解析した結果、7種類の昆虫で、系統関係の影響を受けずに食草を選択していることが示された。これらの結果から、アブラナ科草本の系統関係とは関係しない、何らかの要因により植食性昆虫の分布が制限されていることが予想される。アブラナ科草本のGLSプロファイルの解析、また、昆虫の摂食様式の違いによる影響の評価の結果もあわせて報告する。


日本生態学会