| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-089  (Poster presentation)

山形県庄内砂丘における訪花昆虫とそれらの季節消長

*我孫子尚斗(筑波大・院・保全生態), 郷右近勝夫(宮城県利府町), 日下石碧(筑波大・院・保全生態), 横井智之(筑波大・院・保全生態)

 海浜には、乾燥や高温環境に適応した植物や砂地を生息地とする昆虫類によって固有の系が形成されている。しかし近年、海浜環境は防波堤の建設や防風・防砂のためのマツの植林などにより、改変、消滅の危機にある。そのため環境の保全が必要であるが、依拠すべき知見に乏しい。本研究では送粉系に着目し、海浜における訪花昆虫と顕花植物の関係を明らかにすることを目的とした。山形県庄内砂丘において、汀線に対して垂直に150m、平行に300mの調査区を設置し、2017年5月~11月に毎月2回の訪花昆虫相調査を行なった。各調査回では10時~12時まで訪花昆虫の捕獲及び開花植物の記録、花数計数を行なった。セイヨウミツバチについては捕獲せず目視で訪花個体数のカウントを行なった。本調査より、訪花昆虫は合計39種1147個体(うち海浜性種6種75個体)が捕獲・観察された。ハチ目は全訪花昆虫個体数の72.7%と最も多く、次にハエ目13.4%、コウチュウ目12%と続いた。5月末から6月末においてセイヨウミツバチの個体数が非常に多く、611個体観察された。セイヨウミツバチ以外の訪花昆虫は、9月末を除いてほぼ一定だった。開花植物は25種(うち海浜性種9種)が確認できた。訪花昆虫が多かったのはハマナスで全訪花個体数の24.4%、次にハマボウフウ20.4%、アキノキリンソウ15.6%と続いた。本研究から山形県庄内砂丘において、ハチ目が優占しており、海浜送粉系において重要な役割を果たしていることが示唆された。特にハマナスやハマボウフウが多くの訪花昆虫によって利用されており、海浜性の顕花植物が訪花昆虫の重要な餌資源となっていることが示唆された。ただし、ハチ目の訪花昆虫個体数の半分以上をセイヨウミツバチが占めており、飛来が集中した期間においては他の訪花昆虫へ何らかの影響を与えている恐れがある。


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