| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-099  (Poster presentation)

落葉広葉樹林林冠における内生菌群集構造への樹木系統および空間の影響

*沖三奈絵(千葉大・理学研究科), 阿部智和(千葉大・理学研究科), 中路達郎(北大・苫小牧研究林), 村上正志(千葉大・理学研究科)

 植物の葉内に存在する内生菌は、宿主の成長の促進や、病原菌や植食性昆虫に対する防御物質の産生を通じて、宿主だけでなくその他の生物との相互作用にさまざまな影響をおよぼすと考えられている。内生菌は春先の展葉期に水平伝搬で感染することが知られているが、その生活史や機能が知られている種はごく僅かであり、特に感染時の宿主特異性やその分布への環境の影響、感染後の動態についてはほぼ不明である。これまでの研究は、単一の樹種のみを対象としており、複数の種について内生菌の群集構造を調べた研究はない。そこで本研究では、北海道大学苫小牧研究林の林冠クレーンをもちいて、森林林冠部での詳細な調査を行い、内生菌群集に対する宿主と森林の階層構造の影響を評価した。6月と8月、落葉広葉樹6属9種の林冠木と実生の葉をそれぞれ採集し、表面殺菌による単離培養法により内生菌を記載した。同定には、バーコード領域であるITS領域をもちいた。その結果、100 OTUが記録された。季節を通して宿主特異性を示す菌種が存在し、また、8月に垂直的な環境選好性をもつ菌類が感染することで、季節間で群集構造が変化することが示された。その原因としては、垂直的な微気象の違いや樹種ごとの葉の物理的・化学的形質の違い、また、内生菌種間での生活史の違いによる感染感受性期の相違があること、さらに、内生菌種間の競争の影響など数々の可能性が示唆される。本研究から宿主特異的な内生菌が存在すること、そして、優占種のみならず多くの菌種について、その季節的な動態と階層構造から、森林内での感染動態の理解に繋がる結果を得られた。


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