| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-112  (Poster presentation)

Sr同位体比分析によるトミヨ属の同所的生息地における生息塩分濃度の差の解明

*札本果(京大生態研), 石川麻乃(遺伝研), 北野潤(遺伝研), 申基澈(地球研), 陀安一郎(地球研)

同所的生息地において近縁種や種内多型が共存するには、何らかの資源分割や生殖隔離機構の働きが必要である。北海道厚岸湾に面する全長数kmほどの汐見川では、トゲウオ科トミヨ属に属するエゾトミヨ(Pungitius tymensis)とトミヨ汽水型(Pungitius pungitius)とトミヨ淡水型(Pungitius sp.)の3種の同所的な生息が確認されている。先行研究により、この3種の繁殖場所の塩分濃度範囲に違いがあることが明らかとなっているが、生活史を通して生息する塩分濃度範囲に差があるのかについては分かっていない。
本研究では、耳石のストロンチウム(Sr)の同位体比を用いることで、汐見川のトミヨ3種の生息する塩分濃度範囲に差があるかを調べた。耳石は過去の元素組成情報を残しながら継続的に結晶化する非細胞性組織であり、かつ、耳石のSr同位体比はおおむねその魚が生息した環境水のSr同位体比の値を示す。汐見川の河川水のSr同位体比と塩分濃度を分析した結果、そのSr同位体比は最上流付近から沿岸にかけて塩分濃度と正の相関を示しながら海水の値へと増加することが分かった。つまり、汐見川に生息する魚の耳石のSr同位体比は、その個体が生息した塩分濃度範囲を示すと考えられた。そして、トミヨの耳石を成長線に沿って3つあるいは4つの微小区画に分けて切削し、それぞれのSr同位体比を分析した。結果、トミヨ3種間で耳石のSr同位体比には明確な差がみられ、生息した塩分濃度範囲が種間で異なることが示唆された。また、成長するにつれ生息する塩分濃度域が高くなる個体も確認された。


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