| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-121  (Poster presentation)

標識再捕法により明らかになったアリアケスジシマドジョウの生活史と生息状況

*Yuhei TAZUNOKI, Kasumi Akashi, Shuhei Kita, Yukari Mochioka, Sumire Haramoto, Hiroki Matuda, Makoto Tokuda(佐賀大学)

 アリアケスジシマドジョウは、佐賀県、福岡県、熊本県の有明海に流入する河川のみに分布する九州固有種であり、その生息地は、流れのある恒久的水域と、連絡の良い一時的水域の要素を持つ水域に限られる。本種は2013年に公表された環境省第4次レッドリスト(汽水・淡水魚類)において絶滅危惧種ⅠB類に選定されており、近年の圃場整備の進行につれて、生息地や個体数の減少が報告されているにも関わらず、その生活史や繁殖生態に関しては未だに明らかになっていない。そこで本研究では、佐賀県佐賀市鍋島町蛎久地区の2地点において、標識再捕法による本種の生態調査を実施した。2015年11月から調査地において、網目約3mmのさで網を使用し、努力量60分の定量サンプリング調査と調査地の水深の測定を毎月1回実施した。捕獲した個体は、イラストマーで標識して個体識別するとともに、体長や性別、腹の太さ、成熟度合いなどを記録した後、放流した。標識再捕獲データはJolly-seber法で解析し、推測個体数などを算出した。体長45mm以下の個体は幼魚とみなした。定量調査による捕獲個体数は、夏季は低密度であり、冬季は高密度であった。また、7月中旬から幼魚が出現した。雌の腹部の太さは5月下旬から増加し始め、6月中旬から7月上旬にかけて減少した。調査地の水深は6月から7月にかけて深くなった。また、Jolly-seber法による解析の結果、生息個体数は地点1では1,000~2,000尾(2017年4月の圃場整備以前)、地点2では150~200尾と推定された。繁殖期前に標識した個体が繁殖期後の9月以降にも複数個体捕獲された。一連の結果から、本種の繁殖時期は6月中旬から7月上旬間であり、少なくとも一部の個体は2年間生存することが示唆された。


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