| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-133  (Poster presentation)

外来種ナンオウフジツボの三陸沿岸における侵入過程

*野口遥平(北大院環境), 岩崎藍子(北大院環境), 大平昌史(北大院環境), 金森由妃(北大院環境), 立花道草(北大院環境), 織田さやか(北大院環境), 藤井玲於奈(北大院環境), 石田拳(北大院環境), 岩渕邦喬(北大院環境), 野田隆史(北大地球環境)

外来種の侵略性を評価するためには、初期の侵入動態とそのメカニズムを解明することと、在来種への影響を侵入初期に予測することが望ましい。ナンオウフジツボはヨーロッパを原産とする潮間帯性のフジツボであるが最近三陸沿岸への侵入が報告されている。そこで本研究では、三陸沿岸における本種の初期侵入過程を解明するために、本種の分布、アバンダンス、および幼生供給量の経年変化を明らかにし、加えて、本種の局所住みつきに影響する要因を検討した。さらに、本種の侵入の在来種への影響を評価するために、固着生物群集の出現頻度-アバンダンス関係のなかでの本種の相対的位置付けの時間変化と在来の固着生物各種との生息潮位のニッチの重複を求め、これらをもとに固着生物群集における本種の侵入の潜在的影響を検討した。2008年から2017年まで三陸沿岸の23岩礁で (1) 本種の幼生供給量、(2) 本種の分布 (3) 固着生物各種と捕食者のアバンダンスを調査した。その結果、本種の定着個体は2012年に初めて確認され、底生個体群は、2014年に出現した。本種の局所住みつきは幼生供給量と固着動物の被度が高いほど、高度が低いほど上昇することが明らかとなった。また、固着生物群集の出現頻度-アバンダンス関係のなかでの本種の相対的位置付けは侵入後の経過時間とともに上昇する傾向がみられたが、2017年時点でも、普通種に比べるとその出現頻度、アバンダンスはともに低いレベルに留まっていた。本種と生息潮位のニッチの重複が大きい固着生物はベニマダラとツヤナシシオグサ、イソダンツウであった。以上の結果は、2017年時点では本種の侵入の生態系への影響は考えにくいものの、今後、ニッチの重複度の大きな種を減少させる可能性を示唆している。


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