| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-171  (Poster presentation)

採餌行動の多様性はどのように個体群の生産性を高めるか?

*栁田ゆきの(千葉大・理), 高橋佑磨(千葉大院・理)

種内の多様性は、資源分割などを通じ集団の生産性を高めると考えられる。キイロショウジョウバエには、幼虫期の採餌行動にfor (foraging) 遺伝子の変異にもとづく2型が存在し、活発に動いて餌探索を行うタイプがRover型、あまり動かずに採餌を行うタイプがsitter型とよばれる。本種では、栄養の量を通常培地の15%にした低栄養環境下においてどちらか一方の型のみの集団よりも2つの型が共存する集団で生産性が高くなるものの、高栄養条件(栄養の量が通常培地の50%)では集団内の多様性の増加による生産性の向上はみられないことが知られている。しかし、この背景にある行動的な機構はわかっていない。本研究では、2つの栄養条件で2型間の行動パターンを比較するとともに、異なる行動パターンの共存が個体間相互作用の多寡に与える影響を調べた。まず、低栄養と高栄養の2条件の培地で2つの型の幼虫の行動を観察した。3齢幼虫1頭の動きをビデオカメラで撮影して移動軌跡を記録し、単位時間あたりの移動距離を測定したところ、いずれの条件においてもRover型がsitter型よりもよく動き回ることがわかった。また、両型ともブラウン運動に似た動きをしていたが、sitter型の方がレヴィーウォークに近かった。このことは、栄養条件に関わらず各型が移動距離と移動パターンにおいて異なることを意味している。さらに、各型の幼虫12個体を1:0か1:1、0:1の割合で同居させたところ、2つの型が共存する条件で個体間の相互作用時間がもっとも長くなった。このことは、多様性の存在が個体間相互作用を促進する可能性を示している。本種では集合して採餌することにより摂食効率が高まることが知られているので、本研究の結果は行動が多様な集団ほど個体が集合することで生産性が高まることを示唆している。


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