| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-184  (Poster presentation)

モンゴルの草食獣モウコガゼルの春の移動型の分類と移動による利益の評価

*今井駿輔(鳥取大学), 伊藤健彦(鳥取大学), 篠田雅人(名古屋大学), 恒川篤史(鳥取大学), Badamjav Lhagvasuren(モンゴル科学アカデミ)

動物の長距離移動は食物量の季節変化に対応した行動だと考えられているが、環境条件の時空間的予測可能性が低い地域では、好適な環境に確実に移動できるとは限らない。植生条件の年変動が大きいといわれているモンゴル草原に生息する有蹄類モウコガゼルの、植物現存量の増加期である春の移動戦略を明らかにすることを目的とし、移動パターンの地域差・個体差と類型化と、移動による利益の評価を試みた。2002年から2012年にモウコガゼルの分布域の広域で衛星追跡したモウコガゼル20頭32例について、移動モデルを用いて冬と夏の滞在地と移動期を区分し、冬と夏の滞在地間の直線距離と累積移動距離の比から定住型、直線移動型、遊動型に分類した。また滞在場所の正規化植生指数(NDVI)からモウコガゼルの選択性が高いNDVI値を月ごとに評価し、実際の移動と冬の滞在地に滞在し続けたと仮定した場合の好適NDVI値との差の違いを移動による利益または損失とした。移動による利益・損失は移動期と夏季に分けて評価した。直線移動型(16例)、遊動型(12例)、定住型(4例)に分けられ、遊動型は分布域中緯度に集中し、直線移動型は分布域全域で、定住型は中南部で見られた。ガゼルが選択したNDVI値は5-7月にかけて中程度(0.15-0.2)で一定であり、移動型間での利益・損失の大きさは全期間では違いは認められなかったが、遊動型では移動期に、直線移動型では夏季に利益または損失の個体差が大きかった。この結果は、モウコガゼルの春の移動には、移動中を重視し遊動的に移動するタイプと、移動先を重視し直線的に移動するタイプという異なる戦略が存在する可能性を示唆する。それぞれのタイプが重視する時期における利益・損失の大きな個体差は、本地域における植生条件の時空間的予測可能性の低さ反映しており、定住型の利益が大きい年や地域がある可能性も示している。


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