| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-185  (Poster presentation)

ウスバカゲロウ類幼虫3種の捕食行動:フェンストラップ対ピットホールトラップ

*神宮彬彦, 林文男(首都大・生命)

ウスバカゲロウ類の幼虫には、すり鉢状の巣を作って待ち伏せする種(営巣性)と、巣穴を作らずに砂の中に潜り、通りがかる獲物を捕食する種(非営巣性)がある。前者については、採集が容易であり、捕食行動を含む多くの研究がなされているが、後者については、野外で幼虫を見つけることが難しく、捕食行動についての研究はほとんどなされていない。本研究では、営巣性の種であるウスバカゲロウ(Baliga micans)とクロコウスバカゲロウ(Myrmeleon bore)、非営巣性の種であるコカスリウスバカゲロウ(Distoleon contubernalis)を用いて、3種の幼虫の捕食行動の比較を行った。まず、実験室内で、幼虫を直径150 mmの円形の容器に入れ、餌として与えたフタホシコオロギを捕食する様子をビデオカメラで撮影した。その結果、営巣性種と非営巣性種の間でコオロギの捕食数および摂食時間に差は認められなかった。しかし、営巣性種の幼虫は1例を除いて巣穴の位置を変えることはなく、容器内の中央部に巣穴を形成したが、コカスリウスバカゲロウの幼虫は平均1.4回その位置を変え、容器の壁面近くで定位することが多かった。それぞれの種の生息地での幼虫の待ち伏せ場所の調査を行った結果、野外でもコカスリウスバカゲロウの多くが、木の根や岩などの近くに定位していた。3種の野外での餌条件の調査のために、営巣性2種の生息地では、直径の異なる落とし穴トラップを、非営巣性種の生息地では、設置した人工のフェンス(板)からの距離を変えた同じ大きさの落とし穴トラップを設置した。その結果、前者では直径の大きいトラップほど、後者ではフェンスに近いトラップほど多くの動物が得られた。以上より、営巣性種は、大きな巣をピットホールトラップのように活用して獲物を捕らえるのに対し、非営巣性種は岩や木の根などの障害物のそばに定位し、それらをフェンストラップとして利用することによって捕食効率を高めていると考えられた。


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