| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-191  (Poster presentation)

ナミアメンボの流水域、止水域の利用は季節・世代で異なるか?

*谷野俊介(帝京科学大学院), 森貴久(帝京科学大学生命環境)

ナミアメンボは全国的にみられるアメンボで流水域でも、止水域でも見られる。春から秋にかけて水面で活動し、冬は成虫で越冬する。秋は、越冬前の非繁殖期で採餌だけを行う。
 翅型に多型が知られ、腹部末端に達する翅をもつ長翅型は飛翔能力がある。完全な翅をもたない短翅型には飛翔能力はないが、メスでは長翅型より高い繁殖効率を得ることが知られる。一方、本種のオスの短翅型が飛翔能力と引き換えに何を得ているかわかっていない。また、他種において、流水域は餌が流れて来る分、採餌上の利点があることが示されているが、これについて季節間、翅型間での違いは検討されていない。
 本研究では、東京都内4か所と山梨県の上野原市の流水域・止水域を2016年秋から越冬期間を挟んで2017年秋まで調査し、捕獲される個体の性比と翅型(長翅型か、短翅型か?)を調査した。
 すべての季節で性比に水域間の差はなく、両水域で繁殖効率は変わらないと考えられた。
 雌雄とも2016年秋では、流水域と止水域で長翅率に差がなかったが、2017春では止水域の長翅率が高かった。2017年夏、秋では水域間の長翅率に差がなかった。この2016年秋と2017年春で比較すると、流水域の長翅率は有意に減少していた。しかし、止水域の2016年秋から、2017年春にかけて長翅率は増加していなかった。これは、繁殖期である春に飛翔が可能な長翅型が止水域を好んで利用することを示す結果と考えられる。但し、止水域の長翅型は増加していなかったことから、流水域の長翅型が止水域に移動したのではなく、長翅型は越冬時の死亡率が短翅型より高かったと考えられる。
 また、雌雄で長翅率を比較すると、2017年秋でのみ、メスの長翅率がオスより高かった。この結果は、オスの短翅型に何らかの機能があること、雌雄で越冬及び来春の繁殖をどちらの翅型で迎えるのが適応的かに、異なる事情を抱えることを示唆すると考えられる。


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