| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-228  (Poster presentation)

コウノトリが生息地として利用する水田景観の評価

*福島真理子(東大院・農), 山田由美(慶應大・政策メディア), 一ノ瀬友博(慶應大・環境情報), 板川暢(慶應大SFC研), 石井潤(福井県里山里海湖研), 西垣正男(福井県自然環境課), 吉田丈人(東大院・総合文化)

コウノトリは、絶滅危惧種に指定されている大型の湿地性鳥類である。かつては日本各地に存在したが、高度経済成長期に生息環境が悪化し、1971年に日本の野生個体群は絶滅した。その後、人工ふ化・増殖の取り組みが進み、現在では一部の個体が野生復帰している。
しかし、野生復帰したコウノトリが生息しているのは日本の限られた地域のみであり、一部の地域では生息密度が過密となっている。このため、コウノトリが日本各地に分散して各地域で定着することが、コウノトリ個体群の保全に求められている。
本研究では、福井県が放鳥したコウノトリが生息地として利用した環境を評価することで、コウノトリが分散・定着する潜在的な生息地の景観条件を検討することを目的とした。
 コウノトリに装着されたアルゴスGPSから得られた位置情報をもとに、日中に摂餌などに利用した場所とその周囲の景観条件を評価した。本研究では、コウノトリが集中的に利用していた愛知県知多半島の谷戸地形を分析対象とし、利用されやすい谷戸の景観の特徴を評価した。一つの谷戸における観測点数を目的変数とし、谷戸ごとの景観要因や環境要因を説明変数とした統計解析を行った。その結果、観測点数に影響する要因として、谷戸の周囲長に対する森林隣接長の割合が、他の変数よりも影響が大きかった。このことは、コウノトリが生息地として利用する谷戸は、周囲が森林に囲まれているほど、より好まれることを示している。また、谷戸の平均TWI(地形的湿潤指標)や谷戸内の水田面積の割合が高い谷戸ほどコウノトリによく利用されていたが、谷戸内の都市的土地利用の面積割合が高いほどコウノトリに利用されにくかった。これらの結果は、コウノトリに利用されやすい谷戸の景観の特徴を明らかにしているが、今後、いくつかの課題を新たに検討する分析を進めていく。


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