| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-241  (Poster presentation)

湿地のアンダーユースからミズニラ自生地を守る方法

*相澤直, 倉本宣(明大院・農)

 ミズニラ(Isoetes japonica A. Braun)は本州から四国の低地に分布し、主に池沼やため池、水路、水田などを生育場所としている水生のシダ植物である。ミズニラの生育場所のうち水田は、農地であると同時に自然湿地の緩衝帯としての機能も有している。一方で、人の手が加えられ維持されている二次的な自然であるため、人間活動の変化により大きな影響を受けやすい。近年、急激な人為的環境変化によって在来水生植物の多くが急速に姿を消しており、水生植物個々の生態を明らかにし種ごとの保全方法を検討することが早急に求められている。ミズニラも人間活動を起因とする環境変化により急速に個体数を減らしている水生植物の1つで、国および38の都府県において絶滅危惧種に選定されているが、保全を中心に扱った研究例は数例ほどしかない。本研究ではミズニラに注目し、生育地の特性を環境要因と管理手法の面から解明し、ミズニラ個体群の維持に適した環境と管理手法および耕作放棄等で消滅した個体群の再生について提案することを目的とした。
 調査は神奈川県および東京都内の6ヶ所を対象とし、環境調査(植生、光環境、土壌環境など)、管理手法の把握、耕作放棄年数の推定などを行った。調査の結果、ミズニラ生育地の植生は湿地的な環境に特有のものであることや、リターの蓄積や高頻度の土壌攪乱などの要因がミズニラの生育に負の影響を及ぼしていることが判明した。管理手法については、低頻度の土壌攪乱または草刈り管理のどちらか一方が行われていることが望ましいと示唆された。また、ミズニラ個体群の再生については、以前生育していた場所であれば、生育環境を整備することにより生存個体や休眠胞子をもとにした個体群の再生が可能であることがみいだされた。
 今後、地下水位や胞子の生存条件などを詳しく調査することでより具体的なミズニラ個体群維持のための管理手法が提案できると考えられる。


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