| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-243  (Poster presentation)

環境DNAを用いたため池におけるタガメの分布状況推定

*尾形茂紀(島根大院・生資), 西脇淳浩(パシフィックコンサル), 山添寛治(株式会社PCER), 須貝杏子(島根大・生資), 高原輝彦(島根大・生資)

 ため池には魚類や両生類、甲殻類、水生昆虫をはじめとした多種多様な生物が生息している。水生昆虫タガメは様々な生物種を捕食する上位捕食者に位置するため、ため池生態系の維持機構に影響を及ぼしていると考えられるが、近年においてタガメの個体数は激減しており絶滅危惧種となっている。そこで本研究では、環境DNA分析、機械学習によるコンピュータシミュレーション、及び、行動観察実験によって、主に島根県東部のため池56面を対象にしたタガメの分布推定や本種の好適生息環境、外来種との関係性の解明を試みた。
 環境DNA分析とは生物モニタリング手法の一つであり、野外の水を採取して排泄物などの代謝物由来のDNA情報を解析することで対象種の在・不在や生物量を簡便に推定できる方法である。本研究では、タガメのDNAのみ検出できる種特異的プライマーを開発し、ため池の水サンプル1Lに含まれるタガメの環境DNA及び、既存のプライマーを使ってブルーギルなどの外来種の環境DNA濃度を測定した。その結果、ため池56面のうち7面でタガメのDNAが確認された。これらの池では近年タガメの生息が報告されておらず、新規な生息場所の可能性が見出された。また、多くの池で外来種のDNAが検出された。次に、自作したニューラルネットワークに野外調査で得られた環境DNA結果や環境条件を学習させ、タガメの生息に適する環境について解析した結果、タガメは水生植物のある池を選好するなどの傾向がみられた。行動観察実験では、水生植物を模した木の棒を入れた水槽と何も入れてない水槽で、餌となる魚を捕食する数がどう変わるかを調べたところ、木の棒を入れた水槽の方がタガメは有意に魚を捕食した。これらの結果からタガメの現在の分布域や外来種との関係性、タガメが選好する環境要因について示唆された。


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