| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-278  (Poster presentation)

冷温帯域のアカマツ、カラマツ、コナラ林におけるリター分解過程の比較

*池田郁哉(早稲田大・院・先進), 友常満利(早稲田大・教育), 墨野倉伸彦(早稲田大・院・先進), 鈴木庸平(早稲田大・院・先進), 横田祐人(早稲田大・教育), 安藤誠(早稲田大・教育), 小泉博(早稲田大・教育)

森林生態系の炭素循環においてリター分解は重要な役割を持っている。リターの分解過程ではいくつかの要素に分けることができる。大気へ放出される無機化と、土壌へ放出される溶脱である。微生物がリターを分解する際の呼吸のことが無機化、リターの有機化合物が水の作用で失われることが溶脱である。これらの分解過程によってリターの重量が減少する。リター分解は、樹種の違いや分解段階(新リターと旧リター)で異なるといわれている。しかし、それらに関して詳しく調べた研究例は少ない。そこで本研究では同一環境下における樹種・分解段階の異なるリター(落葉)の分解過程を明らかにし、比較することを目的とした。
リターの分解過程を測定するために、リターバッグ法でリター分解に伴う重量減少(総分解量)を測定し、真砂土上測定法ではリターからの無機化量を測定した。さらに、総分解量から無機化量を差し引くことで溶脱量を求めた。調査は長野県軽井沢町の冷温帯域のアカマツ林・カラマツ林・コナラ林で行った。
まず樹種間で比較すると、総分解量はアカマツ≒コナラ>カラマツの順で大きくなった。それぞれ分解過程をみると無機化量はコナラ≧アカマツ>カラマツの順、溶脱量はアカマツ>コナラ>カラマツの順であった。次に分解段階で比較をすると、総分解量は新リターが旧リターより多い傾向を示した。また、それぞれの分解過程をみると無機化量は新リターの方が旧リターより多い傾向を示した。これは易分解性物質(セルロース・ヘミセルロース等)が初期に分解され難分解性物質(リグニン等)が残存するためと考えられる。また、溶脱量は新リターの方が旧リターより多い傾向を示した。これは可溶性物質が初期に失われるためと考えられる。以上の結果から、同一環境下においても樹種によりリターの分解過程は異なること、分解段階(新・旧リター)により分解量は異なることが明らかになった。


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