| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-281  (Poster presentation)

タケとスギの炭素・窒素利用様式の違い~異なる斜面位置での比較~

*下野皓平(九大・農), 片山歩美(九大・演習林), 榎木勉(九大・演習林), 田代直明(九大・演習林), 智和正明(九大・演習林), 大槻恭一(九大・演習林), 菱拓雄(九大・演習林)

近年、竹林の拡大が及ぼす森林の窒素循環への影響が危惧されている。多くの森林では、斜面位置によって窒素循環の性質が異なるが、竹林に関して斜面位置と窒素循環の関係を評価した研究は少ない。主に竹林は里山などの森林斜面上に広がっており、竹林と森林の窒素循環を比較するうえで、斜面位置による評価は重要である。本研究では窒素蓄積について、斜面位置による竹林と森林の違いを比較した。

調査は、同一斜面上に隣接する管理放棄されたモウソウチク林とスギ人工林で行った。両林分について斜面上に5つのプロットを設置し、各プロット内のモウソウチク(以下、タケ)とスギの窒素蓄積量を求めた。窒素蓄積量は各植物器官の現存量と窒素濃度を掛け合わせることによって計算した。また、各プロットの鉱質土壌(0-10 cm)について体積含水率と全窒素濃度を計測した。

タケの全窒素蓄積量は斜面上部ほど減少した。タケの各器官の窒素蓄積量について、地上部や細根(< 2 mm)は斜面上部ほど減少したが、粗根(>2mm)や地下茎は斜面位置による明らかな変化はみられなかった。一方、スギの全窒素蓄積量や各器官の窒素蓄積量について、斜面位置による明らかな変化はみられなかった。竹林では土壌含水率とタケの窒素蓄積量との間に正の相関があり、斜面上部におけるタケの窒素蓄積量の減少は土壌水分の減少によるものと考えられた。また、土壌の全窒素濃度について、竹林では斜面上部ほど増加したが、スギ林では斜面位置による明らかな変化はみられなかった。竹林では斜面上部ほどタケによる窒素吸収が減少し、土壌に余分な窒素が蓄積している可能性がある。これらの結果から、窒素蓄積の点において、竹林は森林に比べて立地依存性が強いことが示された。


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