| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-284  (Poster presentation)

森林生態系における林床面蒸発量と基底流出量の連続測定システムの開発

*秋場遥輔(早稲田大・院・先進), 墨野倉伸彦(早稲田大・院・先進), 友常満利(早稲田大・教育), 小泉博(早稲田大・教育)


森林生態系の水の循環プロセスを解明するために、水の流入や流出をはじめとする各移動経路の正確な測定は重要である。中でも、水が土壌中へ浸透する経路を示す基底流出と、土壌表面から大気中へと蒸発する経路を示す林床面蒸発は、系外に移動する水の主要経路である。しかしながら、基底流出を林分スケールで測定する手法は確立されていない。また、林床面蒸発はマイクロライシメータ法によって測定されるが、実際の生態系における水の移動が再現されないことや、測定容器内の水分条件が変化しやすいこと、長期的測定を行えないことなどの問題を含んでいる。これを解決するために、本研究では基底流出と林床面蒸発を同時かつ連続的に測定可能な新しい手法を開発することを目的とした研究を行った。
装置の概要は次の通りである。植物根は深さ50 cmまで到達していたため、高さ55 cm、直径15 cmのライシメータを野外に設置した。その下部に排水口を作り、その下に転倒ます雨量計を埋設した。ライシメータはワイヤーで吊り上げて滑車を通して錘と吊り合わせ、その錘を秤で測定した。
ライシメータの水収支は30分毎に測定した秤の重量変化から算出した。下部から排水される量を基底流出量として転倒ます雨量計で測定した。上部から蒸発していく量を林床面蒸発量として重量変化量と基底流出量の差から求めた。林床面蒸発量は1日当たり0.03 mm程度であった。
この仕組みにより基底流出量と林床面蒸発量を同時かつ連続的に測定することが可能となった。一方、この測定には下記の問題点がいくつか発見された。①ライシメータ下部の排水が不十分であり基底流出量は低い値を示した。②装置のメンテナンス前後の重量値に大きな差が生じ、メンテナンスと降雨後の測定の頻度を検討する必要がある。③重量変化の測定にあたり、システム全体のデジタル化を図る等、システムを改善していく必要性が示唆された。


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