| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-293  (Poster presentation)

NO2-生成速度はNO2-消費経路をどのように変化させるのか~土壌の含水率調整・長期培養による検証~

*田中直斗(中央大学), 高橋大貴(中央大学), 長野紫織(中央大学), 中込里穂(中央大学), 小田智基(東京大学), 黒岩恵(中央大学), 諏訪裕一(中央大学)

亜硝酸(NO2-)は硝化・脱窒の中間産物であり、非生物的にもFe(II)などの還元的な金属と反応し、NO, N2O, N2へと変換されうる(Heil et al .2016)。よって土壌窒素循環の経路や機構を理解するためには、NO2-の生物・非生物的な動態の解明が重要である。本研究では、全長100mの斜面上部から下部にかけて、土壌含水率と連動してNO2-, NO3-生成速度が上昇することが明らかになっている人工林内に斜面上部, 中部, 下部の3区画を設置した。各区画の0-10 cm深鉱質土層から採取した土壌を重量含水率(20, 32.5, 45%)で約3カ月間室内培養し、3週間おきに窒素安定同位体(15N)でラベルした15NO2-を添加培養してNO2-生成・消費速度と15N2O,15NO3-の生成量を求めた。これによりNO2-生成活性の変化に伴ってNO2-のNO3-及び N2Oへの変換量が変化するのかを検証した。さらに、オートクレーブ滅菌土壌では抽出液中のFe2+, Fe3+濃度を測定し非生物的なNO2-消費機構を検討した。 含水率32.5, 45%では、全区画でNO2-生成・消費速度は連続的に増加したが、20%ではほとんど増加しないか減少した。NO2-生成速度の上昇に伴い15NO3-生成量は増加したが、15N2O生成量は減少した。NO2-生成能とNO3-生成能が緊密な連携を示した結果、N2O生成が減少したことが示唆された。滅菌土壌ではNO2-生成は生じなかったが、NO2-消費は非滅菌土の41-135%生じた。一方でN2Oへの変換は0.31%に留まり、NOへの変換が顕著に生じたことが疑われた。また一部の滅菌土においてのみFe2+が検出されたことからオートクレーブによる還元的な金属イオンの生成が示唆され、今後の課題としてこのような撹乱をもたらさない手法による検証が必要である。


日本生態学会