| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-003  (Poster presentation)

降水量操作下における植物群集の機能的多様性パターン

*髙鳥友樹(横浜国大・理工), 高木勇輔(横浜国大・環境情報), 岡田慶一(横浜国大・環境情報), 小林真(北海道大・FSC), 森章(横浜国大・環境情報)

草原生態系は高い炭素固定機能や家畜の飼料などの観点から人間社会において重要な生態系の一つと言える。草原は陸上生態系の中で最大の生物群系であるが、その分布は環境条件の中でも特に降水量の影響を強く受ける。こうした背景から、気候変動に伴う降水量の変化が草本群集の種多様性や一次生産に与える影響はしばしば研究対象とされてきた。しかし、それらの結果は研究の場所や方法により様々であり、その変化のプロセスやメカニズムに焦点を当てた研究はほとんどない。
このような植物群集の変化のプロセスやメカニズムは、植物の生存戦略や環境応答に関係を持つ形態や性質(機能形質)を用いることで検証できる。群集内での機能形質の多様性(機能的多様性)の変化は、種の入れ替わりと種間の相対優占度の変化という二つのプロセスにより生じる。
そこで本研究では、降水量操作に対する草本群集の応答を機能的多様性の変化に着目して解析し、機能的側面から草本群集の応答プロセスを検証した。
北海道北部に位置する北海道大学天塩研究林内の半自然草本群集を調査地とした。減雨区、増雨区、対照区を10プロットずつ設け、2016、2017年の春から秋の間降水量操作を行った。機能形質は2017年夏に6種類の地上部形質を計測した。
その結果、2015年(処理前)から2016年(処理1年目)にかけて増雨処理による機能的多様性の増加が検出された。この機能的多様性の増加は、群集内部における種の入れ替わりではなく、形質の異なる種の相対優占度の均等化によるものであることが分かった。特に非優占種の個体群成長の促進が見られた。一方で減雨処理による影響は検出されなかった。増雨に対する群集の機能的な応答が早いのに対し、減雨に対する応答が遅いという結果が先行研究でも見られることから、水分資源の増加と減少はそれぞれ異なるプロセスを介して植物群集に影響を与えることが示唆された。


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