| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-029 (Poster presentation)
シダ植物は下層植生の重要な構成種であり、乾燥や風などの物理的な環境の緩和機能を持つ林床は重要な生息地である。先行研究では、土壌や気温などの非生物的要因から林床での分布を求める事が多かった(Costa et al 2005、村上・森本2015)。
本研究では、林床性シダ植物の分布を高木層の違いから確認することを目的とした。苗場山麓ジオパーク津南町にてブナとスギの境界におけるシダ植物の分布と環境要因を比較して、シダ植物に対する微環境の影響について調査した。
調査方法は、ブナ二次林とスギ人工林に跨るように50 m × 50 mのコドラートを設置し、①シダ植物の分布と②林冠層の被覆範囲、③林床の微地形区分、④斜面角度、⑤2016年冬と2017年夏における落葉層の厚さ(cm) を(x,y)データとして座標に記録した。落葉層は、当年生の落葉層と、未分解のフィルター層に分けて計測した。以上の①と②~⑤のデータで統計解析を行い、シダ植物の分布と各環境要因の関係性を求めた。解析には、スピアマンの相関係数による単相関解析と、Bray-Curtis Indexのβ多様性によるnMDSを行った。
結果として、シダ種組成は7つに類型化され、3種の指標種、ミゾシダ・ホソバナライシダ・シシガシラの有無が判別要因となった。nMDSの結果では、シダ植物は全種がブナを避け、ミゾシダ以外の種が急勾配かつ土壌の薄い場所に偏在していた。単相関解析の結果からは、ブナ林・フィルター層・道が殆どのシダ植物に負の相関を示し、唯一ブナ林と正の相関だったシシガシラは落葉層と負の相関を示した。以上の事から、ブナ林におけるシダ植物の進出を阻害する要因の1つとしてブナの落葉層があり、落葉層の剥離を促す要因として急な斜面角度及び人為的掘削がシダ植物の分布に関わっていると結論付けた。最後に、苗場山麓ジオパーク学術研究奨励事業を通して、本研究を支援してくださった農と縄文の体験実習館「なじょもん」の職員の皆様と、津南の人々に深く感謝申し上げます。