| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-042  (Poster presentation)

クローナル植物スズランの繁殖様式の集団間変異

*三木田涼佳(北海道大学理学部), 大原雅(北海道大学環境科学院)

 植物は一般に花を介した種子繁殖を行うが、種子繁殖に加えクローン成長により新たなシュートを生産するものも存在する。このような植物をクローナル植物と呼ぶ。本研究の対象種であるスズラン(Convallaria keiskei)もクローナル植物であり、強い芳香を持つ花と地下茎の伸長によるシュート形成を行う。クローナル植物では、個々のシュートをラメット、同じ遺伝子型をもつシュートの集合をジェネットと呼ぶ。北海道十勝地方中札内村で行われた先行研究では、種子繁殖に関しては、自家不和合性を持ち虫媒により種子生産が行われることが明らかになっている。つまり、種子生産には、昆虫により異なるジェネット間での花粉の授受が必要となる。したがって、単一ジェネットで構成された集団では、仮に集団サイズが大きく充分な昆虫の訪花があったとしても、種子繁殖は機能しないことになる。中札内の集団では、多くの異なるジェネットがクローン成長によりモザイク状に広がり、接することで種子繁殖が行われていることが明らかになっている(Araki et al. 2005)。本研究は、中札内集団の研究結果を受け、他の北海道内のスズラン集団における集団の維持機構を比較研究することを目的に行った。
 今年度は十勝地方、胆振地方、オホーツク地方の計9集団において、まず種子繁殖に関する調査を実施した。その結果、中札内集団と同様に十勝地方の集団では種子繁殖が行われていたが、胆振・オホーツク地方の集団では、充分な種子生産が認められなかった。このことから、地域により種子繁殖とクローン成長の寄与率が異なる可能性が示唆された。
 今後は、遺伝マーカーを使ったクローン成長の程度の把握や、交配実験により自家不和合性の有無を含めた種子繁殖特性を明らかにする予定である。


日本生態学会