| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-060  (Poster presentation)

カタバミとオッタチカタバミの共存について 〜開花戦略の比較〜

*小野喬亮(東北大・理・生物), 古川知代(東北大・院・生命科学), 板垣智之(東北大・院・生命科学), 酒井聡樹(東北大・院・生命科学)

 外来種は、近縁な在来種に対して優占し、在来種の分布を縮小させている場合が多い、その一方、両者が共存している場合もある。それらは、どのような要因で起きていることなのか。今回は、在来種カタバミと外来種オッタチカタバミを対象に、訪花昆虫の誘引という観点から、訪花回数や、一回の訪花における滞在時間を比較し、両者の共存要因について調べた。
 在来種カタバミと外来種オッタチカタバミは極普通に見られる植物で、両種が同所的に見られる場合もあり、共存していると考えられる。花サイズ、花茎長ともオッタチの方が若干大きく、1パッチの花数もオッタチの方が多い。
 観察は、宮城県仙台市青葉山の東北大学理薬キャンパス周辺の4ヶ所の観察区で行った。ビデオカメラを設置し、訪花昆虫の活動が活発である午前中を利用し、対象とする花を3時間撮影する形で行った。また、撮影した花の直径や花茎長を記録し、撮影場所周辺の両種の花数も調べた。これらの操作を2017年4月28日から7月8日にかけて行い、カタバミ88花、オッタチ128花、計216花について観察を行った。その後、撮影したビデオを確認して訪花昆虫の数、種類、滞在時間を記録した。その結果をまとめ、統計ソフトRで、GLMとGLMMを用いて解析し、訪花昆虫の数や滞在時間に、花数や花サイズが影響しているかどうかや、2種間で差がないかをどうかを調べた。
 花あたりの訪花頻度はカタバミの方が有意に高かった。カタバミでは、観察場所のカタバミとオッタチ両種の花数が多いほど花あたりの訪花頻度が高かった。これに対して、オッタチでは、観察場所の自種の花数が多いほど訪花頻度が高かった。しかし、カタバミの花数は影響していなかった。
 これらの結果から、オッタチが存在することでカタバミの訪花頻度が高まっていると考えられる。オッタチが増えることでカタバミの繁殖成功率が上がる可能性を示唆しており、両種の共存の一因になっていると考えられる。


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