| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-064  (Poster presentation)

帰化寄生植物ヤセウツボの種子生産量への宿主根系が及ぼす影響

*畑川芳弥, 百原新(千葉大学 園芸学部)

 一年生の帰化寄生植物ヤセウツボは,世界各地で農作物に被害を与える寄生雑草として知られているが,日本において宿主被害はほとんど報告されていない.本研究では,宿主被害を抑制している要因を探るために,宿主被害と関係のあるヤセウツボの生長要因とその条件を明らかにすることとした.ヤセウツボの生長要因として,寄生する宿主ムラサキツメクサの根直径に着目して調査を行なった.さらに,寄生されたムラサキツメクサの根を直径別に寄生数を記録し,深度分布を調べた.これらのデータとムラサキツメクサの根系分布を比較することで,寄生されやすい根の特徴を捉えることにした.
 その結果,ヤセウツボの生長量とムラサキツメクサ根直径には有意な正の相関関係が見られた.ムラサキツメクサの根直径別にヤセウツボの寄生数を見ると,比較的細い根への寄生が顕著であり,十分に生長出来ない個体が多数観察された.ムラサキツメクサの根系分布とヤセウツボの深度分布を比較すると,ヤセウツボの分布が集中する浅層では,細い根の密度が高く,被害の大きい太い根への寄生が回避されている事が示唆された.宿主の根系分布により,細い根への寄生が誘導されたヤセウツボの生長量は減少し,宿主被害を抑制している可能性を示す事ができた.


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